トップ シラバス管理 機械科学コース 機械材料学1

工学系

機械科学コース

機械材料学1

科目分野 理工学部
選必区分 必修
担当教員
[ローマ字表記]
岡田 達也, 高木 均 [Tatsuya Okada, Hitoshi Takagi]
授業形態 講義

授業の目的

 機械とは(1)自らの形状を保持する強度を持つ部品から構成されており,(2)各部品が相対的に設計通りの運動をしつつ,(3)外部から供給されたエネルギーを有用な仕事に変換する装置と定義できる。本講義においては,機械を構成する部品の材料である金属材料を対象として,その性質について理解させることを目的とする。
 現在使用されている金属材料の9割以上は鉄鋼材料である。鉄鋼材料は焼入れ・焼戻しに代表される熱処理により性質を大きく変えることが広く知られている。熱処理による鉄鋼材料の性質の変化は,結晶構造や微細組織の変化といった金属物理学的なミクロな現象に伴って起こっている。そのため本講義においては,熱処理に伴う材料の性質の変化という外面的な現象だけでなく,その本質である金属物理学的描像を理解させる。

授業概要

 現在使用されている機械には多種多様な材料が用いられており,その種類も年々増える一方である。限られた講義の最初から最後まで個別具体的な材料を1つ1つ取り上げて,名称と性質,用途について説明を行うことは非常に冗長であり,教育上の効果は余り期待できないと考えられる。本講義においては対象とする材料を機械材料の基盤を成している金属材料に絞る。金属材料は,熱処理によりその性質を変化させることができることが大きな特徴の一つである。すなわち,金属材料はFRPやセラミックス等とは異なり,材料の使用者が目的に応じて性質を比較的簡単に調整できることが利点の一つとして挙げられる。このため金属材料に関する講義においては,熱処理も非常に重要な項目となる。熱処理により金属材料の性質が大きく変化するマクロな現象は,その結晶構造の変化や,結晶粒のサイズや配向性の変化といったナノ~ミクロンオーダーの非常に微視的な現象が原因となっている。近年,性能向上が飽和状態にあると思われていた金属材料について,超強加工を与えて組織を数マイクロメートル程度以下に微細化することで,これまでにない高い性能を発現するバルクナノメタルが得られることが注目を集めており,機械工学を学ぶ者にとっても,金属物理学的な視点に立った金属材料の理解は重要である。
 以上の様な考え方に基づき本講義の前半では,金属材料の熱的に平衡な温度変化に伴う微細組織変化を予測する手段となる平衡状態図の読み取りについて解説する。また,金属材料の中で最も実用的に重要な鉄鋼材料の,非平衡な組織変化について知見を与えるTTT線図やCCT線図について解説する。講義の後半では,基本的な金属材料についてJIS記号や性質,特徴,用途等を解説するが,前半の内容とリンクさせ,熱処理に伴う組織や性質の変化に重点をおいた解説を行う。

教科書

基礎 機械材料学/松澤和夫:日本理工出版会,2014, ISBN:9784890196302

キーワード

状態図,連続冷却変態曲線(CCT曲線),等温変態図(TTT図),熱処理,鉄鋼材料,非鉄金属材料